はじめに~なぜ今、物流COは経営の要なのか?~
「コスト削減のために現場だけ任せていたのに、想定外の事態が頻発している」こんなお声を、これまで多くの経営者から聞いてきました。
特に物流業界では、「2024年問題」として運転手の時間外労働制限などが議論されましたが、実際にはその課題は先送りされたままになっています。さらに地政学的リスクの高まりや新エネルギー転換など、自動車産業を含めた全業界が直面する大きな変化があります。
そこで今回は、「物流CLO(最高物流責任者)の役割と企業価値を高めるための経営改革」について解説します。単なるコストセンターではなく、「企業の生命線」として位置づけるべき理由や、具体策を通じて読者に分かりやすくご紹介します。
『全社最適』を求めて:物流CLOが担う「戦略的連携」の重要性
物流改革の本質は「現場最適」から「全社最適」への転換にあります。これは、個々の部門で最適な選択を行っていたとしても、全体として見た時にコストや効率が最大化されていない場合、企業には大きな損失をもたらすからです。
日産(村田寛一氏)事例
– 2025年4月、物流本部長も兼任したCLOに就任
– 従来は国内・海外で部門ごとに別々に物流を管理
– 全社的なモノの流れが把握できていない状態だった
– 輸送費が製造コストや販売経費に分散しており、全体像が見えにくい
三菱食品(田村幸士民氏)の事例
– 長年委託先任せの物流を「データ可視化」へ転換
– 現場実態を社員自ら把握する体制を整備
– データに基づき配車や人員配置を見直す最適化へ
これらの事例から分かるのは、物流CLOが単なる部門責任者ではなく、「製造」「調達」「販売」といった各部門のトップと対等に話し合い、全体最適を導くべき戦略的経営ポストであるという事実です。
『データドリブン』で変革:具体的な改革ステップ3つ
物流CLOを目指す企業や組織が取り組むべき具体策は以下の3点に整理できます。
【ポイント1】月次ダッシュボードでコスト可視化
– 輸送費を個別科目ではなく「集計ルール」で統括管理
– 製造原価や販売経費に紛れ込んだ物流コストを把握
– データの変化を月次で追跡できるダッシュボードを活用
【ポイント2】社外連携によるDX推進
– GPS情報やセンサーを使った動態管理システムを導入
– 委託先の物流事業者とデータを共有して効率化
– 水平(他社間)・垂直(サプライチェーン)の両面で連携
【ポイント3】現場実態把握を徹底
– 「そんなことしても何の得にもならない」という現場の声も理解する
– COの役割を社員に「社長の指示と思ってほしい」と伝えた事例あり
– データ可視化→最適化→生産性向上という循環を作る
『物流CLOが経営の本質に近い理由』と今後の展望
米国では、物流CLO経験者がCEO(最高経営責任者)に就任するケースも珍しくありません。それは、「物流は企業の価値を生み出す生命線」という考えから来ています。
専門的な知識だけではありません
– 数学的手法や最適化理論を駆使する「データドリブン」領域へ進化
– 「勘と経験」から「科学的な判断」へ転換
– 早稲田大学などの教育機関でも物流分野が工学部にも広がっている
教育・リカレント学習も重要
– 東京大学ではサプライチェーン分野のプログラムを新設(2025年度)
– 「CO人材の育成」を視野に意欲ある人材を募る
– 経営工学は文系・理系を問わず共通教養として価値あり
日本の課題と展望
– 過剰なカスタマイズ習慣が連携を阻害
– コーポレート領域か協調領域かの判断が必要
– 「ロジスティクスは社会人のリベラルアーツ」とも言える
まとめ~『勝つための企業戦略』として物流を再定義する
「物流を『単なるコスト』と捉えるのではなく、『勝つための企業戦略』として再定義できれば、日本企業はもっと強くなれるはずです」
かつては「現場や委託先に管理を丸投げしていてもよかった」と考えられていました。しかし今は違います。部材が届かなければ商品は作れず、運べなければ売り上げは立ちません。物流は企業の価値を生み出す生命線そのものです。
CLOの役割の本質
– 物流部長が管理するのは現場の数字(コストや在庫)
– COが見るべきは「現場指標が総資産利益率(ROA)や株価にどう貢献するか」
– 社内外の連携による全体最適を導くのが仕事
具体的なKPIの違い
– 物流部長:物流コスト、在庫回転率など
– CO:これらの指標が総資産収益率や企業価値への貢献度をみる
今後のビジネス環境
– 「コスト」と「品質」に加えて「持続可能性」も変数に
– ドライバー不足は深刻化(2024年問題は先送り)
– 地政学リスクやエネルギー転換など外部要因の影響
物流CLOを目指すなら、単なる部門責任者ではなく、各部門のトップと対等に話し合い、全体最適を導く戦略的な視点が必要です。また、データドリブンな判断力だけでなく、数学的手法や統計学的な知識も求められるようになりました。
日本企業がもっと強くなるには、「協調領域」として業界全体で標準化を進める勇気を持つことも必要です。段ボール箱のサイズから運送時の業務プロセスに至るまで、徹底した標準化こそが今後の物流競争力の源泉となります。
「ロジスティクスは社会人のリベラルアーツである」
この一言に込められたのは、「現場の細かい知識に加えて、生産・調達・販売、そして社会課題を総合的に俯瞰する広い視野が求められる」というメッセージです。物流CO経験者がCEOに就任する米国では、その重要性がさらに際立っています。
日本企業も「勝つための企業戦略」として物流を再定義することで、より強い競争力を身につけることができるはずです。あなたの組織でも、データ活用と社内外連携を軸とした物流改革を進めることで、持続可能な成長を実現しましょう。


