2026年の経営戦略:ほふく前進経営とは?不確実性時代の生き残り術

伊藤忠 Small Talk

はじめに

あなたは現在、どんなお悩みを抱えていませんか?

物価高や円安、地政学リスクの高まりなどで「先が見えない」と感じることはありませんか。投資先の選択でも、価格設定でも、採用戦略でも、「何をやれば正解なのか」分からないというジレンマに悩んでいる方もいらっしゃるかもしれません。

この記事では、伊藤忠商事の代表格である岡藤正広・会長・CEOが提唱する「ほふく前進経営」という考え方を解説します。不確実性の高い2026年という時代背景の中で、どのようにして企業を生き残し成長させていくのか、その核心部分を明らかにしていきます。

専門用語を避けつつ、実務で使えるノウハウや具体的な事例とともに、読者の方にも分かりやすい形式でお届けします。

「ほふく前進経営」こそ不確実性時代の正解:
着実に進む方法の構築

岡藤正広・会長CEOは、2026年の経営環境についてこう話しています。

「物価高と円安対策が最重要課題だ。原材料やガソリンなど、いろいろなものが高くなっている。円高の方向に持っていかなければならない。そのために日銀は金利を上げなければならないが、一方で政府は大規模な経済対策を打っている。国の財政悪化が懸念されれば円が売られてますます円安になるかも分からない」

このように、内外から不確実性が押し寄せる環境で、「先」を見て投資や判断をしようとすると、大きなリスクを負いやすい。向藤氏はそれを「一寸先は闇ですわ」と表現しています。

そこで提案されたのが「ほふく前進経営」。これは、足元をしっかり固めて、一歩ずつ確実に進むという考え方です。具体的には以下の3つのポイントがあります。

足元を見ずに先を見るのはNG

不確実性の高い環境では、「先のチャンスを狙う」のではなく、目の前にあることを確実に積み上げていく方がリスクが少ない

ばくちはしない

株式市場や投資対象が変化しやすい状況でも、感情的な売買や焦った判断は避けるべき。生成AI銘柄など一時的に注目されている投資には浮足立たない

既存事業の「磨き」だけでは成長不足

現在の業務を効率化し続けるだけでは年5〜10%程度の成長にしかならない。新しい投資も必要だが、知見のない分野への大規模投資は避ける

このように、「ほふく前進」という言葉から想像できるのは、ゆっくりでも確実に進んでいく姿勢。経営の現場では「短期間で大きな成果を出すこと」が求められがちですが、不確実性が強い時代には「着実な蓄積」こそが長期的な成功につながります。

具体的な打ち手:
国内投資の重要性と価格設定の知恵

岡藤氏は、「海外への投資が高すぎる」として、商社として積極的に国内案件に取り組む姿勢を強調しています。円安の影響で海外への投資はコストがかかりすぎるため、日本国内で安く手に入る良い案件を探す方が合理的だとしています。

実際の事例として、伊藤忠商事はCTC(伊藤忠テクノソリューションズ)やデサントなど、関連企業を100%子会社化することで国内事業の強化を図っています。この動きは他の商社にも影響を与え、「国内の案件にもう一度目を向けよう」という流れが生まれています。

一方では、「ちょっと考えた値上げ」こそが好機になるとされています。物価高の影響で「原価が上がったから値上げする」という安易なやり方をすると、一気に消費が冷え込んでしまいます。しかし、商品の質的価値を少し付けることで、戦略的に価格を引き上げる企業は勝っていくという見解です。

ここで重要なのは、「初任給からの成長」を見据えるという視点です。向藤氏は「初任給の引き上げはあまり意味がない」と話しています。「学生も初任給が1万円、2万円上がったから行くというのはどうかなと思う。それよりも、入社してからどのような夢があるか。課長や部長になった場合はこんなに報酬がもらえるという方が、目標が立つし、『頑張ろう』と奮い立つだろう」と述べています。

これは給与体系の設計において、絶対額だけでなく「成長の道筋」を見せることの重要性を示しています。社員のモチベーション向上には、短期的な恩恵よりも長期的なキャリアパスの方が効果的です。

インフレ循環と企業の責任

岡藤氏は、企業業績が上がり、社員給料が増え、それが消費に回るという「理想的なインフレ循環」を目指すと話しています。「今はその過渡期だ」とも述べています。

この文脈には、企業の社会的責任(CSR)の要素が含まれています。安易な値上げは避ける一方、「定性と定量の両面で輝く企業であることが大事だ」と強調しています。これは「利益だけでなく働き方も大切」「社員に優しいだけでは不十分でバランスが必要」という意味です。

伊藤忠商事では、現在「よくできるという評価の社員には部長級で最大年収約4000万円、課長級で約3500万円」がもらえる仕組みになっています。これは成果に応じて報酬を引き上げる明確なインセンティブ制度です。

さらに重要なことは、「知恵を絞らなければいけない」という姿勢です。物価高という環境下で、ただコストを下げるだけでなく、「商品の質的価値を少しでも付けて」価格を設定する発想が求められます。消費者は安い商品だけでなく、「価値があるから支払う」という判断もします。

まとめ

不確実性の高い時代、私たちは「先」を見て進むのではなく、「足元」を見ながら確実に歩みを進めるべきです。向藤氏が提唱する匍匐前進経営の核心には、短期的な成果への執着よりも、長期的な信頼構築があると言えます。

現代のビジネス環境では、AIやデジタル技術など新しい分野が注目されていますが、それらに飛びつく前に、自社の土台を固めることが重要です。投資先の選択でも価格設定でも採用戦略でも、「確実性」こそが最も重要な指標になります。

同時に、企業として「インフレ循環」を生む努力が必要です。社員の給料を増やし、それが消費につながることで、経済全体の活性化に貢献できるのは、企業側の責務です。単なる利益追求だけでなく、社会全体とのバランスを考えることが、長期的な成功の秘訣と言えます。

プロフィール
この記事を書いた人
S. Hiro Black

日本に血縁を持つフランス人です。ヨーロッパやアメリカなどで新規事業開拓の仕事を長くしてきました。今は日本に住んで活動しています。ここでは、社会経済、科学、スポーツの気になった話を独自の視点で解説します。

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