はじめに
皆様も、AI活用についてご興味はありませんか?
“AI万能論”が叫ばれる一方で、実際に導入を試みると”思ったほど成果が出ない”といった声も聞かれるようになりました。
では、本当にAIを成功させるにはどうすればよいのでしょうか?
今回の記事では、重電大手・川崎重工業の事例から、実際のAI導入成功の秘訣をご紹介します。魔法のような技術を単に導入するだけでは、大きな成果は得られません。重要なのは、「現場を知る」という地道な取り組みです。
この記事を通じて、皆様も自社のAI活用戦略を見直すきっかけとしていただければ幸いです。
AI導入の真実:「魔法の杖」ではなく「道具」
AIを”万能な魔法の杖”だと勘違いすると失敗します。
生成AIの登場で万能感が増している中で、実際には限られた業務のみを代替できるのが現実です。
川崎重工業のロボット事業部では、過去5~10年分の発注契約データをAIに読み込ませたシステムを導入しました。この結果、適切な価格での発注につながり、全体で毎年数千万円の改善効果を生み出しています。しかし重要なのは、システムを設計や他の部門にも広げたことで全体が強化されたことです。
「業務そのものを見直すかという議論」こそ、AI導入において欠かせません。
成功のポイント:3つの具体的な取り組み
ポイント1:リーダー自らが現場を訪問する「行脚」
林和輝氏(当時川崎重工明石工場)が2023〜2024年に実施したのは、「各部門に訪ねて回る」という活動でした。
自身の所属する調達部門の業務は理解していますが、設計や他の業務は門外漢です。そこで「業務フローそのものは何か」「困っていることは何なのか」を現場の声から聞き回りました。
ロボット事業部自体が多忙な中でしたが、キーマンを探して時間を割いて訪ねたことで、足を使ったリアルな行脚が可能になりました。
ポイント2:対面での伴走体制の重要性
AIセ活用製造業DX支援会社「キャディ(東京・台東)」が川崎重工を支えました。累計250億円を超える資金を調達し急成長している同社ですが、担当者たちはスマートなスタイルではなく、顧客と向き合うためのスタンスを取ります。
林氏の行脚には常にキャディの担当者が同行し、対面での伴走が可能になりました。今も川崎重工に週4回は顔を出して次の改善の種を探し続けています。
ポイント3:直接話した一言から課題を捉える
キャディのカスタマーサクセス本部長・人木雅広氏は、「人が介在して技術を活用できるように『翻制』する必要がある」と語っています。
顧客への深い理解なしに、うまく機能するAIを導入することは難しいです。「推進するリーダーの伴走を支援することがカギ」になります。直接話した際の何気ない一言から課題をすくい上げ、それに応える仕組みへと提案しました。
現場感覚:「魔法」ではなく「足を使った取り組み」
AIという先端システムと、足を使ったリアルな行脚。似合わない組み合わせに見えるこの取り組みが、川崎重工がAIをうまく活用するために必要でした。
この事実が「仕事の感覚」を変えるのは、以下の通りです:
- 技術依存からの脱却:AI万能論に依存せず、人間が主体で考える姿勢を維持
- 現場の声の尊重:システム任せにせず、実際の業務課題を理解する重要性
- 継続的な関与:一度導入して放置せず、定期的に現場と向き合う体制
専門的に言うと、これは”Human-in-the-loop(人が介入した循環構造)”の考え方です。AIを活用しつつも、人間の知見や判断が不可欠という認識です。
まとめ
AI導入の本質を再考する必要があります。
技術はあくまで手段であり、目的ではありません。現場を知るために足を運び、対面で課題を探り、人間が主体で仕組みを作る――これが、真の成果を生む鍵となります。
魔法のような技術を期待してはいけないのです。現実的なアプローチこそが、競争力強化につながります。自社のAI活用戦略を、現場の声と連動させたものとすることで、持続可能なDX実現への道が見えてきます。
「技術が進歩しても、人の心は変わらない。それを忘れるな」というメッセージです。


