はじめに
会議の席で突然、「今のチームの課題は何か」と尋ねられたとします。その瞬間に、頭の中が空白になり、「なにか言わなければ」と焦って、結局周囲と同じような意見や、自分の本当の気持ちは隠してしまうという経験は、多くのビジネスパーソンが持っているのではないでしょうか。
「何も浮かんでこない」「お茶をにごす」……言語化する前の思考を固めることが、いかに難しいか。しかし、今の時代、率直な意見を言う能力こそが、個人の心理的安心感やチームのパフォーマンスを支える基盤です。本稿では、電通コピーライターで著書の『瞬時に「言語化できる人』が、うまくいく』の構成者である荒木俊哉氏(※注:元の資料には荒木氏名義ですが、週刊東洋経済での記事は細野由香氏執筆という情報も混在しますが、ここでは資料内容の核心として「言語化力」の概念を重視)が提唱する具体的な思考法を紹介し、読者にとって役立つブログ記事を構成します。
単に「伝え方」を磨くことではなく、「何を言うか」という内面への働きかけこそが重要であることを理解すると、仕事の解像度がぐっと上がります。
伝承から「言語化力」へ。思考の「解像度」を上げるための本質は「伝え方」ではない
多くの人は、「会議での発言力」が不足していると感じていますが、それは単なるコミュニケーションのスキル不足なのではありません。
その原因は、頭の中で思考したまま、それを言葉としてアウトプットする行為そのものが未熟なためです。これを「言語化力」と呼びます。週刊東洋経済 2023.9.2 の記事によれば、言語化力とは、脳内で曖昧に存在している思考を、明確な文字や言葉に変換する力を指します。
ここで重要なのは、この力は「特別な才能」ではなく、「訓練すれば誰でも身に着けられる汎用的なスキル」だということです。しかし、その訓練法についてこれまであまり議論されてこなかったのが実情でした。
社会の変化とともにもう必要のない感覚です。
過去であれば、「言わずとも通じる」という空気感(あうんの呼吸)で進めることもできましたが、今の多様な人材が集まる職場では、その感覚は通用しなくなっています。特に心理的安全性の高い組織では、異なる背景を持つメンバーからの「意見の数」に価値が置かれるようになります。したがって、「誰もが納得する意見」や「優等生の回答」として答える必要はありません。大切なのは、いかに自分らしい考えを言語化できるかです。
つまり、「伝え方」を学んでも、言語化力そのものは育ちません。会議や企画書作成など、自分の考えを表現する場面は数多くありますが、それ以前の段階である「何を言うか」という内面での整理こそが、ビジネスにおけるコミュニケーションの本質となります。
メモ書きトレーニングで思考を連鎖的に蓄積する方法
具体的ノウハウ(A/B/C)
では、具体的にどのように言語化力を鍛えればよいのでしょうか。週刊東洋経済で紹介されている「メモ書きトレーニング」には、4 つの大きなメリットがあります。
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- メリット 1:隙間時間での実施が可能
わざわざ特別な時間を設けなくても、仕事中の会議前の休憩や通勤中の電車内など、いつでもどこでもトレーニングできます。これは継続を促す点で大きな強みです。
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- メリット 2:客観視による発見
頭の中で考えるだけでなく、実際に紙に文字として書き出すことにより、自分の思考を客観的に眺めることができます。これにより、これまで気付けていなかった気づきや発想が生まれます。
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- メリット 3:連鎖反応による脳内蓄積
メモ書きは単独の行為ではありません。書き出した言葉がきっかけとなり、さらに思考が膨らみ、新たな言葉が書き出されるという好循環(連鎖)を作ります。
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- メリット 4:発言時のストック活用
会議などで意見を求められた時、脳内に多くのストック(蓄積された思考・意見)があれば、その中から必要な要素を瞬時にピックアップできます。つまり、ストックの多さが言語化力の高さに直結します。
具体的なトレーニング手順:芋づる式思考法
これを実現するための具体的な方法が「A4 の紙を使った思考掘り出し」です。以下の手順で練習していきましょう。
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- ステップ 1:テーマの書き出し
A4 の一番上に、今取り組んでいる課題や主題(例:「チームの課題は何か」)を記入します。ここが思考のトリガーです。
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- ステップ 2:上段に答えを書く
テーマに対して、まず結論や回答を上段(1 行目)に記載します。「チームの課題は意見が少ないことだ」などです。
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- ステップ 3:下段に理由を深掘りする
さらにその下に、なぜそうだと感じたのか(理由)や、関連する考えを記していきます。1 行目に書いた答えを見て浮かんだ思考を 2 行目に書くという具合に、「芋づる式」に思考を深めていきます。
重要ルール:集中と時間制限
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- 時間制限は 2 分
メモ書きのトレーニングでは、一度に書く時間を約 2 分に設定します。これにより、瞬時に深く思案し、集中力を高めることができます。
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- 目標枚数は週 3~9 枚(または 1 日で数枚)
毎日行うことで、思考の癖になり、スピードがアップします。特に「三枚程度」を目標にすると、その習慣化による効果は大きく、最終的に言語化する力だけでなく、自分のことを深く理解することにもつながります。
このようにして、「無意識の思い」を言語化し書き出す行為は、思考の解像度を高めるだけでなく、自分自身と他者を理解する力を育みます。結果として、相手の話をよく聞き、自分の考えを加えて発展させる能力が高まります。
「あうんの呼吸」からの脱却が、多様な人材を活かす鍵
仕事の感覚への影響
メモ書きのトレーニングを習慣化すると、以下のような変化が生じます。これらを仕事における「感覚」として捉えると良いでしょう。
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- 思考の「解像度」が高まる
以前は曖昧だった感情や課題が、具体的な言葉として定義できるようになります。「なんとなく不安」→「予算不足と進捗遅れを懸念している」など。
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- 発言の準備時間が短縮される
会議で突然意見を求められた時にパニックになることもなくなります。事前にストックしてある思考パターンの中から必要なものを選べば、即座に話すことができます。
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- 心理的安全性の向上
言語化力が高まると、チームメンバー間の信頼関係が深まり、心理的安全性の高い組織作りに寄与します。結果として、パフォーマンスがより高まります。
注意点:専門用語に立ち止まらない
「言語化力」という言葉自体が難しく感じるかもしれませんが、それは単に「文法が良い」という話ではなく、「内面の思考を外部化する技術」です。もし「心理的安全性」などの概念が出てきても、それは「失敗しても良い雰囲気」や「率直な意見を言える環境」という意味で捉えてください。本稿で紹介するメモ書きは、特別な道具は不必要であり、誰にでも行えるシンプルなアクションです。
まとめ:思考の整理から始まる、自分自身を磨くプロセス
会議で声を上げないのは、単に能力不足なのか。いや、そうではない。それは頭の中で思考する解像度が低いからである。言葉を失うことのないよう、内面への働きかけこそが、ビジネスコミュニケーションの本質だ。
言葉にする前の思考を、どうすれば明確に見せることができるのか。その手は、ただのメモ書きの中にあった。A4 の紙にテーマを書き出し、上段で答え、下段で理由を掘り下げる。それが、「芋づる式」に思考を整理する最も実用的な方法だ。時間制限を設け、2 分の集中で実行すれば、その効果は即座に現れる。
このトレーニングの本当の意味は、単なる発話力向上に留まらない。他者を理解し、自分の考えを磨くことによる自己成長であり、最終的には多様な人材が集まる組織において「自分らしさ」を表現する土台となる。
言葉に詰まるとすれば、それは思考の深さが浅いからではないか。そう考えれば、会議での緊張は、内なる思考の解像度を上げるための準備運動のように思える。今日から、紙とペンを用意し、自分の思考を可視化しよう。それが、心理的な安心感を与え、仕事のパフォーマンスを底上げする第一歩だ。


