賞与を給与化!年収同額でも手取り増する「知っておくべき制度」

賞与 Small Talk

はじめに

「ボーナスが減ったから不満」なんて思ったことはありませんか?

最近、ニュースや話題になる「賞与の給与化」という言葉を耳にしたことありませんか?ソニーG大和ハウス工業といった大手企業が取り組んでいるこの動き、「年収が同じでも手取りが増える」「社会保険料も安くなる」など、一見すると企業側の都合のように見えるけど、実は社員のメリットもあるようです。

そこで本記事では、「賞与の給与化」という仕組みをわかりやすく解説します。なぜ大手企業がこの制度を採用しているのか、実際に手取りにどれほどの差が出るのか、将来の年金への影響や注意点まで、知っておくべき重要なポイントを詳しくご紹介します。転職を検討中の方、給与体系が気になる方はぜひ最後まで読んでください。

賞与の給与化とは?年収同額でも手取りが増える仕組み

まず、「賞与の給与化」を理解するための基本をお伝えしましょう。

簡単に言うと、従来「夏ボーナス」と「冬ボーナス」と2回に分けて支払っていた報酬を、月給の一部に組み替えてしまうことです。つまり、「月給が高い」「ボーナスがない」という形になります。

この制度導入により、年収が同額でも手取りが増えるメリットがあります。なぜでしょうか?

それは「社会保険料の仕組み」にあります。厚生年金や健康保険などの保険料は、月給に応じて計算されるからです。賞与が入ると、別途「標準賞与額」として扱われるのですが、これにも保険料がかかり、会社と従業員で半分ずつ負担します。

ここで重要なのが、社会保険料には等級上限があります。月給65万円を超えると、その等級に達すると保険料は頭打ちになります。つまり:

・月給が63.5万円以上の場合
・賞与分を月給に組み替えることで
・同じ年収でも保険料総額が減る

このため、年収1,100万円の人で試算した場合、賞与ありで社会保険料約154万8千円だったが、賞与なし(給与化後)だと約135万5千円になり、手取りに約20万円もの差が生まれる計算になります。

この仕組みを理解すると、「なぜ企業が月給を増やすのか」「なぜ優秀な人材を確保しやすいのか」も納得できますね。

具体的なメリット・デメリット・リスクのポイント

ポイント1:社会保険料の減額効果が大きい

年収が高いほど、手取り増加の恩恵は大きくなります。一橋大学の佐藤主光教授(財政学)によると、「高所得層ほど手取りが増え、受ける恩恵が大きい」とのことです。

なぜなら、給与に応じて負担額が決まる社会保険料の仕組みがあるからです。月給65万円以上の場合、自己負担額は約5万9,000円で頭打ちになります。このため、月給を上げるだけで保険料負担率は低くなり、労使双方に有利な計算になります。

実際にソニーGでは、2025年に本体と関連会社の約1万5,000人を対象に報酬制度を見直しました。その一環で賞与の給与化を進め、新卒初任給を3万8,000円引き上げたという実績があります。

バンダイも夏と冬の2回に分けていた賞与を1回に減らし、大和ハウスは賞与の比率を大きく下げて月給に分配しました。

各企業の姿勢を確認してみましょう:

・バンダイ:「報酬制度改定の目的は年収における月給比率の引き上げであり、社会保険料についての考慮はしていない」
・大和ハウス:「副次的に社会保険料負担が減るが特段そこをみて設計しているわけではない」
・ソニーG:取材に対して回答しなかった
これらから、経営者も理屈を知りながら導入していることがわかります。

ポイント2:残業代や不利益変更のリスクがある

ただし、この制度には重要な注意点があります。月給が増えることで残業代も増加することになります。なぜなら、基本給が上昇すれば、その分 proportional に残業代も増えるからです。

また、業績が悪化した場合でも、「待遇の不利益変更」となるため、社員の同意なしに月給を下げられないという点も注意が必要です。つまり:

項目 給与化前(ボーナスあり) 給与化後(月給中心)
給料額面 低い 高い
月の手取り ボーナスで変動する 安定した月給
不利益変更可能か 比較的容易な場合が多い 社員同意が必要

この点は、企業の人事制度を考える上で重要な視点になります。

ポイント3:将来の年金受給額への影響

ここが特に重要かもしれません。年金額は保険料負担に比例する仕組みになっています。つまり、社会保険料が減ると将来的な年金受給額も減少する可能性があります。

そもそも標準報酬月額に上限を設けているのは、「老後の年金額の所得格差が大きくなってしまうのを是正するため」です。しかし賞与を給与化すると、この制度改正による影響を受ける可能性があります。

つまり、現在の「手取り増」のメリットを受けながら、将来「年金が減る」というデメリットがあるというトレードオフの関係に注意が必要です。

今後の制度改正と企業の動向

2025年6月に成立した年金制度改革法により、保険料の計算に使う「標準報酬月額の等級上限」が変更されます。現在65万円だった上限を、27年から29年にかけて段階的に75万円まで引き上げる計画です。

これは企業目線でも重要な意味を持ちます。なぜなら、賞与の給与化による社会保険料負担軽減効果が相対的に小さくなるため、今後ますます月給アップに慎重になる要因にもなりうるからです。

一橋大学の佐藤教授はこう述べています:「今回の制度改正は対症療法的な対応にすぎない。所得税のように年収ベースで判断すべきだ」と。つまり、単にボーナスを給与化するのではなく、より根本的な給与制度の改革が必要という見解です。

ソニーGやバンダイなど大手企業が導入している背景には、「人材確保のための月給増」という目的があります。高水準の賃上げが定着してきたことを受けて、優秀な人材を確保しやすい環境を作り出そうとしているのです。

まとめ

年収同額でも手取りが増える「賞与の給与化」は、社会保険料の仕組みを理解すれば、一見すると不思議に思えても理にかなった制度設計と言えます。大手企業が導入している理由には、「人材確保」「月給の見栄え向上」「副次的な社会保険料削減」といった複合的な目的があります。

ただし、メリットだけでなく、残業代の増加や将来年金への影響、不利益変更の制約といったリスクにも注意が必要です。自分の状況に合わせて、給与体系の検討は慎重に進めるべきでしょう。朝礼で話すにしても、会議で共有するにしても、「短期的な手取り増と長期的な福利厚生」を見極める視点が大切です。

プロフィール
この記事を書いた人
S. Hiro Black

日本に血縁を持つフランス人です。ヨーロッパやアメリカなどで新規事業開拓の仕事を長くしてきました。今は日本に住んで活動しています。ここでは、社会経済、科学、スポーツの気になった話を独自の視点で解説します。

S. Hiro Blackをフォローする
Small Talk
Meshy AI DMMブックス
S. Hiro Blackをフォローする
タイトルとURLをコピーしました